モウルスカルタに視覚障害者も遊べるルールを追加

「モウルスカルタ」に新しいルールを加え、目が見えない人とも一緒に遊べるようにしてみたよという話です。

もともと弊社では視覚障害の方も遊べるゲームを作ってきましたので、音を使う今回のゲームは、きっと目が見えなくても遊べるものになるだろうと思っていました。

ですがルール検討の段階で、対応するカードを早いもの勝ちで取るカルタのような遊びが面白く、最終的にそちらを採用しました。視覚障害の方にとってカルタは場に広がる情報を一覧する必要がありますので、なかなか遊べません。いつか目が見えなくても遊べるルールを追加したいと思っていました。

当事者(視覚障害の方)のご協力を頂いて完成したルールが下記のものです。説明書にルールAとルールBが既に載っていますので、ここではルールCとします。

ルールC(カウンティングゲーム)

モールス信号の短い音、長い音の数を数えるシンプルなゲームです。

3人〜6人用、遊ぶ時間は10分くらい。

準備

プレイヤー全員に3枚のカードを配ります。余った場合は箱に戻します。

各プレイヤーはカードを裏向きにしてカードを持ちます。

最初のプレイヤーを任意の方法で決めます。

手順

モールス信号を鳴らす順番は時計回りで順番に回ってきます。

自分がモールス信号を鳴らすときは、手持ちのカードから1枚を選び、そこに描かれているモールス信号をアプリを使って鳴らします。(点字版は触って選びます)このときに音を聞く人は目をつぶってください。

モールス信号を鳴らし終わった後、鳴らしたプレイヤーは下記の3つの質問ができます。

  1. 短い音の数は?
  2. 長い音の数は?
  3. 全部の音の数は?

左のプレイヤーから答えていきます。(同じ数は答えられません)

全員が解答したら正解を発表し、正解したプレイヤーが、選ばれたカードをもらえます。

例:

Aさん(鳴らす人)「ピ、ピ、ピー、ピー、ピ、ピー」(とても速く)
Aさん「では、全体の数は?」
Bさん「えーと、7!」
Cさん「うーん、6!」
Aさん「正解は6!Cさんにカードあげます」

左隣の人が次のモールス信号を鳴らす人になります。全員に2回番がまわったら終了です。手持ちのカードの枚数が一番多い人が勝ちです。

カードに点字を打ってみる

ルールCを目が見えない人と遊ぶためには、カードに手で触って分かる目印を付ける必要があります。下記のオリジナルの点字記号を作ってみました。

ところで弊社では、2週間に1回の定例MTG後に全盲の鍼灸師の方がいらっしゃって針を打ってくれます。(ちなみに出勤は原則として2週間に1回です)定期的に看てもっていると体調の変化などを教えてくれるのでとっても良いです。

事前にお願いをして点字器(?)を持ってきていただきました。

紙を挟んで、ドライバーみたいな道具で点字を打ち付けます。

 

ギュ、ギュ、と力をこめて押し付けて行きます。結構、力がいる。。

なお裏から表を打ち付けるため、記号の向きが逆になります。

地道に打ち続けること30分。できました。そして遊べました!

視覚障害者に向けたゲームを作るコツ

当たり前のことですが視覚情報がないと出来ないゲームは多いですが、条件を限定すれば問題なく遊ぶことが出来できます。

コツ1:情報を手元に集める

視覚情報の良いところは、ざっと全体を見渡せることです。カルタはまさに、視覚情報の得意な部分を活かしたゲームと言えるでしょう。

視覚障害者は指で情報を探るわけですが、触っている部分のみの点の情報になるので、後半に散らばる情報を把握するのは難しいです。

この問題を解決するためには、情報を手元に集めてしまうのが良いでしょう。

コツ2:視覚の代替手段

視覚以外の情報で情報を伝える必要があります。

  1. 点字
  2. 触覚・重さ
  3. 目が見えている人が教える

実は「文字」としての点字はほとんど読める人はいません。ですので視覚障害者用にひとまず点字にしただけではあまり効果は望めません。モウルスカルタでは点字を使用していますが、これは文字ではなくオリジナルで作った2種類の記号です。

目が見える人が教えるのも良い方法です。

情報がオープンになっているゲームは、カードに書かれている情報を読み上げてると一緒に遊ぶことができます。この方法は「ドミニオン」や「パンデミック」で試し、遊ぶことができます。

特に協力ゲームでは視覚障害者がまとめ役になる場合が多くゲーム成功に貢献できます。推測ですが、普段から点の情報を集め整理をしなくてはいけないので、まとめるのが上手なのではないでしょうか。

また、人狼系のゲームもマスターや観客の人が見てあげてこっそり教えてあげると遊ぶことができます。

コツ3:順番を明確にする(1人ずつゆっくり)

視覚情報がないと「あいづち」のような何となくの気配を感じ取ることが難しくなります。これは目をつぶって会話をしてみるとよく分かります。

ですのでトランプの「スピード」のようにすばやく親が交代するものや、間や空気を読みながら行うゲームが難しいです。逆にこの弱点を利用した「カウント・イン・ザ・ダーク」というゲームもあります。

この問題を解決するためには、誰の番かを明確にし、考える時間が十分に取れるものが良いでしょう。時間の目安は1分以上です。ですのでトランプの「ババ抜き」は短すぎるのであまり適していません。

(濱田)