10周年をむかえて

2025年1月5日をもって、弊社は10周年を迎えました。

日経ビジネスによるとベンチャー企業の生存率は6.3%とのことで、ちょっとだけ誇らしいです。これまで支えていただいた皆様、ありがとうございます!

弊社はビデオゲームの開発を主な事業としていますが、創業時の主な事業はボードゲームの製造でした。社名の「インダストリ」(産業)は、その名残です。11年目の事業方針を定めるにあたり、創業の頃を振り返ってみようと思います。

メイカームーブメントの影響をうけての創業

2010年代、安価な3Dプリンターやレーザーカッターの登場により、世界はメイカームーブメントに湧きました。商品は大量生産が前提の時代、新しいアイデアを1個から商品化するという、このムーブメントは夢のような話に思えたのです。実際に、たくさんのスタートアップが生まれ、実験的な商品が生み出されていました。クリス・アンダーソン氏のMAKERSという本も指南書のような役割を担っていたように思えます。

MAKERS 21世紀の産業革命が始まる

私はこのメイカームーブメントの影響を大いに受けました。小ロット生産の利点は、今まで大量生産では作れなかった極めてニッチなお客さんや、社会的マイノリティに対して商品を作れるところです。社名のギフトテンインダストリの「テン」の部分は、10個から商品を作るぞっ!という意気込みを表したものです。

▲最初の商品「アラビアの壺」は手作業で10個だけ生産した

それから10年が経ちました。会社を潰さないよう様々なアプローチを試し、軌道修正を繰り返していたら、いつの間にか弊社はデジタルゲームの開発会社になっていました。創業時のメンバーは入れ替わりましたが、私を含め2〜3名という規模のままです。売上規模も大して変わりませんが、当初は受託が売上のメインだったのが、現在は自社商品の売上比率が100%になりました。お客さんに価値を提供でき、私達も生活することができて嬉しい限りです。

ところでメイカームーブメントは今はすっかり下火になりました。これは私達が経験したことでもあるのですが、物体の商品を売り続けるのは本当に難しいことです。在庫の管理や、不良品の交換、関税の問題、卸業への営業だったりと、製品開発以外の業務が山のようにありました。それらの業務は2~3名では太刀打ちできません。おそらく製造業に潜在的に潜む膨大な業務が、メイカームーブメントから生まれたプロジェクトが長続きしない原因の1つなのだと予想します。

私も通っていたTech Shop Tokyo が2020年に閉店しました。彼らのブログを通じて、メイカームーブメントの興りと衰退の流れを振り返ることができます

TechShopが日本に遺したもの、ポスト・メイカームーブメント時代のメイカースペースのあり方

製造業の大変さを痛いほど味わったので、デジタルの良さを身をもって実感しました。デジタルはコピーが無限なため在庫を気にする必要もなく、あとからアップデート可能で、ほとんど障壁なく国を超えて販売できます。業務量が少ないのも魅力ですが、弊社のような開発者が主体のチームでは、力が発揮できる領域でしょう。

創業のコンセプトを、デジタルの領域で試す

10年が経った今、改めて社名に込めたコンセプトを振り返ってみます。

10個からの物作りが目指したのは、大量生産では世の中に届けられない商品を作ることです。手段が製造からデジタル開発になったとしても、特別なこだわりをもったお客さんや、社会的マイノリティの方々(例えば視覚障害者など)にむけて「ぐっと!」くる楽しい商品をゼロイチで作り出すこと。創業のコンセプトを今あらためて見直すことを、当面の目標にしてみようと思います。

この理想を、実際的な商品の要素に落とし込んでみました。

  • 世の中にない驚きのあるもの
  • 世界中の少数のお客さんに喜んでもらえるもの
  • 少人数、短期間で開発でき、保守が容易なもの

今年は、第二の創業の年だと気を引き締め、カッティング・エッジな商品に取り組んでいけたらと思います。引き続き、ギフトテンインダストリをよろしくお願いいたします。

代表取締役 濱田隆史